第216話

「な、あ、あずみっ、」


「あははー水絵が普通に接客してるとか笑えるー。」



戸惑いを隠せない水絵さんが別人にみえてしょうがない。オブラートに包むことを知らないまゆゆが、二人を交互に見てから目の前のスクープを公言する。 



「え……、まさか、恋人とか?」


「違いますけど」

「違わないこともないけど」



後者を発言した磯良さんが、人差し指を口元に立て、まゆゆに笑顔を向ける。



は?恋人?いるの?貞子が?令和のアイドルと??



まゆゆは「萌え死ぬ」と一言言って、両手で自分の頬を挟んだ。



「ライブの最後に意味深発言してましたもんね。あれってやっぱ恋人に向けてだったんだ。」



きゃーと今にも発しそうなまゆゆを前に、水絵さんが磯良さんを軽くあしらった。


 

「接客中だからあっち行ってて」

「んじゃお姉さんたち終わったら、次俺接客してね。」



水絵さんが机に置いていた手の甲に、そっと磯良さんが手を合わせる。水絵さんはすぐに手を引っ込めようとするけれど、磯良さんは水絵さんの手を掴み離そうとしない。



つぎ・・、俺接客してね水絵。」

「わかったから!離して!」



磯良さんが満足そうな笑みを見せると、後ろにある待合席に座った。



磯良さんのお陰で、水絵さんがすんなり私たちの旅行予約をしてくれたのは言うまでもない。

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