第205話

正直、色々迷った。私の画像のことを言うべきか、言わざるべきか。



六神のプライドを傷つけたくはないけれど、もしあの画像が六神にとってのわだかまりになっていて、重荷になってしまうくらいなら。いっそ全てを受け入れた方がいいと思った。



それこそ、脅される弱味になるほどのものならば。




「……私の泣き顔。そんな好き?」



六神を見つめ返して言ってやる。



一瞬目を見開いて、すぐにいつもの気怠い表情の六神に戻った。



ただ罪悪感のせいで私には視線を置いていられないのか、伏目がちに息をつく六神。



ねえ、震えてる?私に嫌われたと思ってる?



きっと今、六神の方が鼓動を鳴らしてるはずなのに、私の鼓動がこれでもかとドクドク波打って。震えているのは私の方だ。



謝りもせず、かといって目を泳がすこともない六神の今の気持ち、教えてよ。



こっち向いて。



私が覗き込むように六神の瞳を追っていると、この男は覚悟を決めたように、私を真っ直ぐな瞳でとらえ言った。



「うん。」

 

「それだけかい。」



うん。って、何そのYES.よりも少ない文字数。あんたのプライドを傷つける覚悟で言った私が馬鹿みたいじゃん。



しかも明らかに悪いのは六神の方なのに、どうしても上から目線の態度は外せないらしい。



「……で?こんな夜にそのストーカーの元に何しに来たの。」



日が長くなってきた今日この頃だというのに、今外はすっかり暗さを増している。



何時か確認していないけれど、さっき駅でみた時刻は21時を指していた。



居酒屋で飲み会を終え、今から2次会にでも行こうかという時間帯に一人暮らしの男の家を訪れる理由なんて、他に何があるというのだろうか。

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