第182話
「んやっ…あっ」
「もしかして、初めて?」
「ん、せ…んせ」
最初は首筋から胸にかけて、いくつもキスを落とされて。先生の指は、あっという間に私の敏感な部分に触れた。
「綺麗な脚してるね。ここ触られてるの、わかる?」
「せんせい――――……」
いきさつは不純かもしれないけれど。それでも私にとっては、それが大学に入って初めての恋となった。
先生は困ったことがあればと連絡先を教えてくれて。何回かは私が呼ばれて、ホテルに誘われたこともあった。
それがまたラブホテルなんてチープな場所ではなく、割といいホテルだったから大事にされているとばかり思っていて。
思えば私から会いたいと言って会ってくれたのは数えるくらいで、先生の都合で会っていたことの方がずっと多かった。
授業に論文に学会に。おまけにストレスと重圧まで加算されるのだから、私みたいに学校とバイトだけの生徒が先生に合わせるのは当然だと思っていた。
たまに夜、ご飯に誘われた時はとても嬉しかった。
帰りの車内では身体を求められたけど、それでも愛されている事を疑いもしなかった私。
でも、夏休みに突入した頃。
私はトイレで盗撮被害にあった。
連日ニュースでは盗撮関連の報道が流れていて、うちの校内でも模倣犯のように盗撮事件が相次いでいた。
もちろんまだ若かった私は、盗撮された恐怖が忘れられず、自分の盗撮写真を犯人が持っているかと思うと気が気でなく。当然恋人である先生も、同じように考えてくれるものだと思っていた。
「先生…!」
「ああ、どうしたんだい?今日はこれから出張でね、」
「私、……トイレで、盗撮されて…」
「え…、実来さんが…?」
「はい。あの、どうしたらいいですか。どうしたら犯人捕まえられますか?!」
息を切らし、研究室のドアの前に立つ私を、驚いたように見ていた先生。てっきり犯人に対し怒ってくれるものだとばかり思っていたのに。
先生はすぐに腕時計に目をやると、椅子から鞄を取り、忙しなく私の方へと近づいてきた。
「そういうのは学生課に言うといいよ。」
「……え」
「じゃあ僕は急いでいるから。部屋から出てくれる?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます