第176話

サニーファクトエンターテイメント内定済ということは、当然業界関係者なわけで。試しに名前をウェブ検索してみれば、出るわ出るわ。



なんと水絵は、サニーファクトエンターテイメント社長の娘だということが分かった。



まさかの爆弾案件で正直面倒になったものの、元法学部の模擬裁判選手権で最優秀賞を受賞した俺の名がすたると思った。



水絵は100年に一度の目を持つスカウトマンであり、RainLADYのメンバーを構成し、育ててきたのだとか。



しかし水絵は、枕営業だの詐欺まがいのやり口で彼らをトップに立たせてきたため、枕営業をしたプロデューサーの妻が水絵を法的に訴え、サニーファクトエンターテイメントをクビになったと芸能サイトに書かれていた。



ただしそれはあくまで表面上、世間一般に広まっている建前の話。



RainLADYのファンの見解は全く違うもので。



水絵のマネージメント力を恐れた社長の本妻が、意図的に悪どい情報をでっちあげ、水絵をクビに追い込んだとファン個人のブログには綴られているものが多かった。


 



 

「ってことで、水絵ってとんでもない世界の住人だったんだね。世界が遠すぎて転生もできやしないわ。」

 

「……ふうん。まさかちと君がそこまで調べるなんて思いもしなかったけどね。」


「俺のスマホ盗み見みたあんたがそれ言う?」



仕事帰り、水絵の職場の近くにあるカフェで待ち合わせ、縁を切る糸口をつきつけてやった。因みにパンケーキは頼んでいない。



「で。それを知ってどーするの?うちのパパにでも告げ口するのぉ?それか週刊誌に垂れ込むとか?」

 

「ああ、そうだな。週刊誌よりもまあ垂れ込むとすれば、こいつかな。」

  


俺が見せたスマホ画面は、RainLADYのメンバー、磯良亜泉の公式ブログだった。



「…………」


「俺は今からこいつにファンメールを送ろうかと思う。あんたらの育て親が、俺にセフレ関係を強要してくるんですけど、どうしたらいいですかね?って。」



いつもの饒舌な水絵はいないが、それでも歯向かうプライドはまだ持ち合わせているようだった。

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