第170話
そこには、どこか見覚えのある画像が映っていて
「はるかちゃん、これって、あなたよね?」
なぜこんなものがここにあるのか。というか、これって、この時って。
――――……私一人だった気が
「大学の頃から全然変わってないから、ちと君を送っていった時にすぐ見つけちゃった。」
「…………」
「まさか同じ職場だったなんてね。」
「な、どういうこ」
「ちと君をわざわざ会社まで送っていったのは、私が“この子”に会って、“この子”にこの画像を見せてあげたかったから。」
画像を指さし、“この子”と言う水絵さん。
それは何度見返しても、紛れもなく私で――――……
「この画像、ちと君のスマホに保存されてたものなんだよ?」
六神の、スマホに……?
「ねえ、これって盗撮になるんじゃない?にしても不謹慎だよねえ。ずっとこの画像を隠し持ってたなんて。」
「…な、なんであなたが、これを」
「たまたまだよ?彼のスマホがずっと振動してて、うるさいから覗いてみたらこれが出てきたの。」
「…あ、あなたと六神は、そんな、スマホを見せ合うくらい親しい仲なの…?」
「ううん。合コンで初めて会った日にこの画像で脅して関係を持ってただけー。」
何を言っているんだこいつは――――――
咄嗟に自分の手が、水の入ったコップをつかんだ。
「―――やめて。私はあなたに忠告しにきたんだよ?そんな古臭いドラマみたいに水ぶっかけられる筋合いはないし!」
私がつかんだコップを、水絵さんが囲うようにつかんできて。触れられた手の甲が、次第に熱くなっていく。
初めて彼女の憤りを感じ取れて、すぐにコップをつかんだ手を離した。
「あなた、一度病院受診した方がいい!赤の他人のプライバシーに漬け込んで何がしたいの?!」
周りにいたお客さんに、じーっと見られているのが分かった。でも理解不能すぎて一発殴ってやらないと私の気が収まらない。
私だけならまだしも、六神を巻き込んだ罪は大きいんだよこのクソアマ。
「…病院なら、何度も受診したわよ。」
「…………」
「それと。…これ、どう考えたってあんたのじゃん!なんで気づかないの?!」
水絵さんが着けていた腕時計を外して、わざと金属音をたてながら机に置いた。
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