第168話

セフレだとか下種な話をしていては小動物たちの教育に差し支えると思い、水絵さんをカフェスペースの方に誘った。



手を洗って消毒した後、席について真向いで対峙し合う私たち。



先制攻撃は稲垣水絵で、その攻撃力はすさまじいものだった。



「ちと君て、ベッドの上だとくそ優しいよねー」



おい。そこで私が共感するとでも思ってるのか。



しかしながら下衆の勘繰りとまでも言えない、あまりにもまっすぐな瞳で言うのだから、こっちはつい毒されてしまう。



「そ、そうですね…。ちょっと、いや、かなり甘々になりますよねー。」


「でもいれてる時のちと君の顔は征服感たっぷりって感じで。超そそるよねー。」


「…………」



無理だ。無理に決まってる。私はそこまで六神とは進んでいないし聞きたくもない。



膝に置いた手を強く握れば、一気に体が汗ばんできた。水絵さんはそんなのどこ吹く風で、テーブルに肘をついたまま水色のバタフライピーを飲んでいる。



いや、やっぱりこの人、嫌味で言ってるのかもしれない。水絵さんが口からストローを離すと、ストローには真っ赤なリップがついた。




「私のこと、バカみたいだって思ってる?」


「……はい。」


「正直なんだね。」


「……そうですね。」


「今の会話ではるかちゃん、口調も顔も暗くなったよね。嫉妬した?」


「……」

 

「試してごめんね?はるかちゃん、ちと君のこと好きなんでしょ?」

 

「はい。好きです。」


「じゃあなんで付き合ってないの?」


「……さあ、私にもわかりません。」


「両片思いほど時間の無駄なものってないのにね?だってほら、私みたいな女に邪魔されちゃうんだし」

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