第167話

動物アレルギーではないけれど、特に好きってわけでもないし、なんならけっこう高いから今まで来たことがなかった。その初体験を何がどうして六神の元セフレと来なきゃならんのか。




「私、うさぎって好き。」


「…大人しいからですか?」


「ううん。寂しいと死んじゃうから。」


「…………」



理由になっていない述論こそ、哲学というものなのか。頭の悪い私にはわかりません。



水絵さんがしゃがんで、抱いていたうさぎをゲージに戻す。



キナリのワンピースを着た彼女の腕には、随分とカジュアルそうな腕時計がつけられていて、なんとなく違和感を感じた。



私はこの空気をどうしていいか分からず、若干六神に似たシャープなフクロウに視線を移した。




「その子、どことなくちと君に似てるね!」



棚の上のゲージにいるフクロウを見た水絵さんは、私と同じ感性なのか、それとも頭の中には六神しかいないのか。どちらにしろ嫌なので、勇気を出して聞いてみることにした。



「あの、六神とは、別れたんですよね?」



水絵さんがフクロウから私へ視線を流す。



「だから、セフレだから別れたとかじゃないって。」


「……でも、六神はもう関係は切ったって、」


「ちと君はそう思ってるかもしれないけど、私はそうは思ってないよ?」


「え」


「だって、セフレなんだもん!好きな時にやるだけなんだから、また欲求不満になれば誘うよ?」

 


ああ、この人とは何かが合わない。セフレだの恋人だのという言葉に括られるのではなくて、自分の都合で遊べる相手はとりあえずスマホに登録しておくと。そういう信仰心をお持ちの方なのだろう。

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