第166話

「……あの、六神なら今日は午後から本部で研修会なので、ここには帰ってこないと思うんですけど。」


「ああ、チガウチガウ。あなたに話があるの。」


「私、ですか?」


「うん!あなた、はるかちゃんでしょ?!」



まさかの名指しをされて、「うえっ」と声が上ずった。なぜ貞子が私の名前を知ってるのかなんて言うまでもない。ただ六神が貞子の前で自分の名前を出していたのかと思うと、複雑な心境だ。

 


場所を変えて話そうと言われて、何かされるのではと貞子の赤い外車を前に戸惑っていると、彼女が私に名刺を渡してきた。



旅行代理店の契約社員をしているようで、“稲垣水絵”と書かれている。



「もし私がはるかちゃんに何かしたら〜、会社に訴えればいいから!ふふ」


「そ、そんなことは決していたしませふふふ」



貞子のノリに上手くついていけてるだろうか私。どことなく常人っぽさのない貞子が普通に旅行代理店に勤めているというのが信じられない。






「はるかちゃん、カフェなら猫カフェ?小動物カフェ?」



車内で助手席に座る私にそんなことを聞いてきた。



……えーと?それは今から話をしに行く場所はどっちがいいかということ?



まゆゆでも思いつかない提案に戸惑っていると、水絵さんが、「はるかちゃん小動物っぽいから小動物カフェいこ」と車を走らせた。



動物周りにはべらせた修羅場って。未知との遭遇すぎてSF研究会に入会できそうだ。



で、この人は本当に私を小動物カフェに連れてくのだから、やっぱり六神ヘルプ。

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