第155話

当時は若いのもあってか、あまりのことにショックを隠しきれず、信頼していた人に助けを求めたけれど。その人はその事件以来、私を面倒だからと邪険に扱うようになってしまって……



正直、盗撮されたことなんかよりも、その人に裏切られたことの方がよっぽど辛く、苦しかった。まさか六神にあの時のことをほじくり返されるなんて……。六神には、知られたくない事実だ。 




「俺、ほんとたまたまなんだけど。他の生徒が盗撮されそうになってるとこに居合わせてさ」


「そう、だったの?」


「で、その盗撮者捕まえたんだわ。」


「え?うそ!あれって。六神だったの?!」


「ああ、…はは。もう今さらね、なんも知らないのかよ、なんてツッコまないし。」


「……ですよね」



六神が冷めた目で私を見上げて、それからすぐに微笑みかけるから、その大好きな顔がどうしようもなく愛おしくて見とれてしまう。



学生課からだだっ広い掲示板に貼り出されたA4用紙には、人目を惹かせるには謙虚すぎるほどの小さな文字で。『盗撮者が無事、学内生徒により捕らえられました。』との報告を見たのを思い出す。




「あの時春風、俺に手紙書いてくれたよね。」


「…あ、うん。そう。どこの誰かは知らないけれど、学生課の人から渡してもらうようにお礼の手紙書いたの。」


「盗撮されたやつ何人かいた中でさ、お礼の手紙なんて書いてきたやつ、春風くらいだよ。」


「だって。捕まえられたって知って、安心したし。お礼くらい言いたくなるよ。」


「うん。だから俺は、そんなお前が忘れられなくなったんだよ。」

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