第148話
六神が最後まで付き合ってくれたことに胸が高鳴る。
弱くてダメな自分でも切り離さず、受け入れてくれることを知ってしまった私は、六神への気持ちを改めて自覚するしかなかった。
今日一日、六神は自分の仕事を他の営業に引き継いだそうで、そこまでしてくれたことに好きよりももっと上の感情を抱いてしまったのだ。
それが自分の胸を締めつける行為だと分かっていても、どうしようもなく愛しいと感じてしまった気持ちは、私を少しだけ素直にさせてしまう。
「六神、本当に、ありがとう。あんたがいてくれなきゃ、私、駄目になってた。明日から、引きこもりのニートになっていたところだった。」
駅の構内で、デート帰り際の恋人みたいなシチュエーションになり、しとしと雨の効果も手伝ってか、淡い雰囲気を創り出す。
で、外はあっという間に強風を伴う土砂降りになった。
「ほらみろ、お前がめったにないこと言うもんだから天候が悪化した」
「わあ、ほんとだ。私ってば天気の子だったのか〜」
途中の駅まで一緒のため、電車に乗り込むも、一駅先で電車が停止してしまうからこりゃ参った。
【この先の駅では、悪天候により運転を見合わせております】
会社から一駅先の駅のホームで、人混みの中、後ろから背中を押され、思わず六神に縋りついてしまう。
その時、触れた六神の身体がやたら熱く、違和感を感じる。
「……六神、なんか、あつい?」
「……え?」
六神を見上げれば、目がとろんとして、少し意識が朦朧としているように見えた。
「ちょっと、大丈夫?!」
手で六神の頬に触れれば、案の定かなり熱い。
「……気持ち悪いとかある?お腹、痛い?頭痛い?」
罪悪感よりも、胸きゅん効果がもたらされた。
こんな状態で今日私のミスに一日付き合ってくれていたのかと思うと、愛しいよりもさらに上の気持ちが芽生えてしまう。ので自制するしかない。
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