第140話

池駒が目を泳がせハラハラしているも、私は絶望に打ちひしがれていた。



今は先輩と六神のやり取りなんてまじどうでもいい。それよりも1秒でも早く謝罪したいし、シールを取りに行って貼替作業に取り掛かりたい。



結局、「まあイケメン二人揃えて行くのに損はないか。」と先輩の自意識過剰発言により、3人で味八フーズへ行くこととなった。



先輩が乗ってきた白い社用車に、六神と後部座席へと乗り込む。




「実来、名刺は持ってきた?」

「はい。持ってきました。」



残りの水滴を拭き取る作業は、暇をみてまゆゆや他の先輩、後輩が手伝ってくれることになった。ここまで皆に迷惑をかけたことなんて今までにあっただろうか。精神にこたえる。



「それと、明日までに報告書の提出を忘れないように。あとシール貼替前と貼替後の商品画像もちゃんと添付してね。」


「はい。」



並んで座る六神が、小さく舌打ちをする。



「子供じゃあるまいし。そこまで言われなくたって実来にだってわかってるでしょ。」



先輩が前のミラー越しにこちらを一瞥した。



「実来がここまでのミスをしたのは初めてなんだ。新人の頃、唯一泣くことのなかった実来からしたらパニックに陥っているはずだから。こっちは教育者としてフォローしてるだけだし、何も知らない六神君が横やり入れることじゃないよね。」



基本的に、先輩の下について泣かなかった新卒者はいないらしい。いや唯一泣かなかったのが私だけなのだとか。まゆゆでさえ泣かされたというのに、私の根性どこまで曲がってるんだと自分でも嫌というほど自覚している。

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