第139話

「何しに来たの?」



先輩がひやりとした声で六神に問う。



「何しにって。その案件、そもそも俺が狩ってきた仕事なんですけど。」


「相変わらず君は上司に対する態度が歪んでるね。まあそういう目上に媚びないところが評価される部分でもあるんだけど。」

 

「お褒めの言葉あざーす課長。」



私がミスさえしていなければ、ここで六神の背中をひっぱたいて言葉遣いと態度を注意できるのだけど。私に仕事を投げてくれた本人相手に、今は縮こまることしかできなかった。



『俺が六神に連絡入れといたんだ。』

『え、そうなの?』

『さっき実来ちゃん、六神からきた仕事だって言ってたから。まずかった?』



いつもなら池駒のお節介はうざいと思うところを、首を振って否定した。なんにせよ六神には報告しなきゃならなかったし。早い段階で顔を合わせられて良かったと思う。




「課長。俺も一緒に味八フーズ連れってってください。」


「君はどちらかというと親会社担当なんじゃないの?僕と実来さえ行けば特に必要ないでしょ。」


「あるでしょ。俺味八フーズとの担当と何度も顔合わせてるし、“柚子皮”は俺と実来の案件なんですよ?」


「一応社内でも先方には敬称はつけるべきなんじゃない?」


「必要性を感じない場では無駄なことはしたくないんで。使い分けができてる大人なら問題ないでしょ。」

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