第137話
「…そ、それは、味八フーズさんが持って来てくれるっていうので、」
「こっちの失態で先方に甘えるな。取りに行きますくらいのこと言えなくてどうするの?」
「……すみません。」
「ミスが許される年じゃないんだ。もしどうしても自分だけでカバー出来ないと思った時は僕にすぐ電話しろよ!」
「…………え、」
「僕は実来の元教育係兼恋人(仮)兼婚約者(仮)なんだから。」
話がとんでもない方向にいきかけてる間にも、池駒の表情が驚きのあまり、とんでもないことになっていた。
先輩の、当たり前でしょ。みたいなその得意げな顔は、梅雨前線のような季節の天気と共にしれっとやってくるらしい。
私、まだ返事してないですよね?どうして(仮)とか不確定の状態でもそんな自信満々なんですか?それが先輩のユニークスキルなんですか?
「は…え…、えと。課長と実来ちゃんて、そんな感じ?」
“そんな”と指示語を使う池駒の中でも、まだ処理しきれずあやふやなのだろう。ただ私が、そんなってどんな?と聞き返すのは愚問だ。
「池駒君、地獄の現場作業が辛いならいつでも僕に相談してね。僕なら人事に掛け合えるから。」
先輩が満面の笑みを池駒に放つと、池駒のスカウターはLV.9999を示したようで、その顔はなぜか赤く染まっていた。え、そっちの嗜好がおありで?
今の先輩の言葉を要約すると、私たちのあやふやな関係性を黙っとけよと。そういうことだと思うのだけど、当の池駒は「いや俺この仕事嫌いじゃないんで。」と返していた。
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