第136話

シールが到着するまでの間、現場の倉庫内で、池駒と他の現場の3名とで、タオルを持ち、商品の水滴を拭う作業をしていた時のことだった。



「実来!」



倉庫の入口に、なぜか攻撃力9999ほどのまばゆいオーラを放つ朋政先輩が現れた。



「は、はあっ?!朋政、課長?!」



池駒が驚いた声を上げ、しゃがんで作業していた私も慌てて立ち上がる。膝いたい。



「せ、先輩?!なんで、ここに?!」


「たまたま山城課長に研修会の件で電話したら、山城課長から愚痴られてね、」


「えっ…、」


「朋政くんが昔契約とってきた味八フーズの件で、実来くんがやらかしたって。」


「う、うそ」



や、山城課長!なんつー余計なことを…!



昔私が担当していた味八フーズのフリーズドライ商品は、実は朋政先輩が取ってきた契約だった。



きっと山城課長は、自分よりも年下なのにデキる先輩に対して、嫌味で言ったのだろう。



「僕も営業で外出てたからついでに来てみたんだけど。実来、自分の尻拭いは自分でしろってあれほど言ってあったよね。」



厳しい先輩の表情に、私はただ頭を下げることしか出来なかった。



「……はい。」


「シールを先方に持って来させるとかどういう頭してるの?さっき謝罪の連絡入れたら、あと2時間ほどで持っていきますって言われたんだけど。」



すでに事情を把握し、先輩自ら味八フーズに連絡を取っているだなんて仕事が早すぎる。しかも先輩は、ただ嫌味で話されただけだというのに。

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