第127話

「……なに熱くなってんだよ。」


「そらなるよ!同じ女だもん!」



いや、なに貞子目線で考えてるんだ私。つまり私が言いたいのは、新しい彼女とそんな適当な付き合いをする未来のために、あんたと私は別れたとでもいうのか。



「はあ?しょうがねーじゃん。向こうはサラサラそんな気ないんだし。」



六神は再びスマホに視線を落とし面倒くさそうに触り始める。駄目だ。やっぱりこいつ、私をむかつかせる天才だ。



椅子から立ち上がった私は、六神の目の前までいき、その胸ぐらを掴んでやった。



「ふざけんな!適当な付き合いしてる女がわざわざ朝から職場まで送ってくれるわけないでしょっ?!」

 

「…………」


「女は好きな男の前では口からでまかせ・・・・しか言えない生き物なんだよ!!もっと真剣にみえさんのこと考えてやれ!」



一瞬、平手で殴りかかったけど、営業という仕事に響くとまずいと思い、そこまでは出来なかった。



ただその殴れなかった手は、六神につかまれてしまった。



「離してっ」


「なあ、俺たちって、なんで別れたの?」


「はあ?ソリが合わなかったからじゃないの?!」

 

「コンビ組んだ芸人が決別した話はいいからさ。」 


「っちょ、」


「教えてよ実来センセー」



爽やかな朝が台無しか。



六神がつかんでいた私の手を、今度は持ち替えるように腕をつかんできて。私は引かれながら六神の上に跨がるように座らされた。



コンクリの柱の影になってるとはいえ、こんなん他の社員に見つかったら始末書もんじゃなかろうか。

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