第115話

「慰めるって、その人に同調すればいいって思ってたけど。この先、後輩が厳しい社会でもやっていけるような慰め方してる人、初めてみたんだよね。」



そこまで聞いて、あ、と自分の声が漏れる。



そんなにも私のこと、ちゃんと見てくれていたなんて―――――……




「どう?“めっちゃ好き”になるには充分な理由じゃない?」




先輩は困ったように笑うけど。



私はただ、涙が溢れていた。



ずっとずっと、いつから我慢していたのだろう。



いつから涙を呑むことに馴れてしまっていたのだろう。



六神に彼女ができたと知った時も



六神に、悔しかったらド清純になってみ。って言われた時も



六神の家から深夜に一人で家に帰った時も



一人でビール飲みながら愛憎ドラマを見ている時だって。さっさと泣けばいいのに、わざと感動ものを避けるようにして泣くことから逃げていた。



今日も朝から馬鹿みたいに泣きたくなったのに、馬鹿みたいに泣けない私はこのままどうなるんだろうって。



私、強くなんかないよ池駒。



ただ弱い自分を受け入れてもらえないのが怖くて、もしかしたら強い私しか受け入れてもらえないんじゃないかって。意地を強さと履き違えるくらい不器用で。



六神が絶縁したくないのは、強い私なんじゃないかなって。私がすぐに泣く面倒な女だったら、きっと悪友にすらなれていないんじゃないかって。



彼女になれなかった“見合わない”女は、いつだって六神の基準値を下回らないよう必死で。



だって私、六神に“好き”だなんて言われたことがないから。



先輩に身を委ねてしまいそうになるのは、先輩がなんの躊躇いもなく好きだと言ってくれるからだ。



弱さを見せても、きっと受け入れてくれるだろうって。待ち構えるかのように大きな受け皿があるから、私はきっとそこに飛び込めるのだ。

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