第105話
――――「……お前と絶縁なんて、無理だから。」
――――「ストーカー行為でもなんでも関わりにいくし。」
――――「うん。友達でも悪友でもなんでもいいから。」
磯の香りと波の音に五感がさらわれる中、先週の昼休みのことが思い出される。
ストーカーをする相手がどうとか。キスをする相手がどうとか。六神にとってはどうでもいいことなのかもしれない。
友達だろうが恋人だろうが、自分が心を開いた相手ならストーカーもするしキスもできると。彼にとってのストライクゾーンは平均より幅が広いのかもしれない。
本物の彼女は、スタイルが良くて背も高くて、色白な美人さんだった。池駒は非常識だと言っていたけれど、それを躊躇いなくできてしまうのは勝ち組の余裕という見方もできる。
ハリウッド映画で、彼氏の職場に平気で乗り込んでいく彼女はごまんといる。日本の常識に囚われない、グローバルな彼女と言い切れなくはない。
そんな風に六神と六神の彼女のことばかり考えているの。なんか、疲れた。もうそればかりを考えている時点で私は負け組なのだから。
自分の右往左往する感情に振り回されるのは―――いくら寿命があっても足りないように思う。
このまま本当に海に飛び込んでみてもいいのかもしれない。
「……今日なんでこんな早いの。腰丸まってるし、すでにばばあなの?」
頭上から私をばばあ呼ばわりする声が聞こえて、いやいやそいつを見上げる。
今日も私を見下げる顔は、朝からとっても険しそうだ。
「最近私、早いよ?…独り身のばばあになんか用かい。」
先週、六神からの連絡がなく、いてもたってもいられず朝早くに出勤してからというもの、これが日課になりつつあった。
「んじゃじじいも座らしてもらうわ。」
でも今日は日課にプラスして、“六神とのひととき”が貰えるらしい。彼女と出勤した今日という日に限って。イベント発生は望まない時にしかやってこない。
六神が私の目の前の椅子に座った。
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