第104話

“みえ”という滑らかな言い方が、やたら慣れ親しんだ様子で、全く別の六神を見ている気がした。私よりも遥か彼方から二人は出会っていたのかなと思うと、傷つくと同時に仕方ないかと諦めもついた。



ふと六神が彼女と柵の外にあるコインパーキングにいるのが見えた。これ以上自分を傷つけても労災はおりないので、早々に六神は見えないものとして扱うことにする。



それから喫煙所で池駒のスマホが鳴って、第三倉庫でブラジルからの荷物に破損が生じたらしく、慌ててコンビニでサラダチキン8個を購入し現場に向かった池駒。まゆゆのことも聞けず、六神と貞子の悪口も話せないまま不完全燃焼だ。



よく考えたら、池駒が私とカップルってことにしておけばいいって言ったこと、あたかも私がまだ六神を好きだということに気付いているような言動だ。



池駒に限らず、まゆゆや刈谷、大輪田くんにも、きっと私がまだ六神に未練があることがばれているのかもしれない。だからこその仕組まれた同期会だったのかと。



そんなに私って。分かりやすいかな。



それに気付いてしまえば、今さらながらに色々と恥ずかしくなってきた。



このまま埠頭から海に飛び込んでしまいたい欲求に駆られるも、朝ごはんがまだな私は、とりあえずコンビニで買ったスパムむすびを食べることにした。



オフィスとコンテナターミナルの間には、丸テーブルと椅子が並ぶオープンテラスのようなフリースペースがある。



早く出勤したのが運のツキか、そこにはまだ私しかいなかった。

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