第102話
「実来ちゃんは強えよな。」
「…わたし?はは、…まさか。」
「その強さに嫉妬しちゃうわ。」
「惚れ惚れするんじゃなくて?」
「余裕のある奴はそうかもね。」
「え」
「でも基本男はプライドの塊だから。自分が上に立てないと思う女には嫉妬するもんなんだよ?」
冗談で返したつもりなのに、予想外にも真面目に返されて、少し手の中が熱くなった。
……強いだなんて、自分で思ったことはない。ただ見栄っ張りで意地っ張りで。負け戦でもとりあえず土俵には上がりにいく、無謀な馬鹿ではある。
なんにせよ池駒には、可愛くない女だと言われていることには納得できた。
「あ、実来ちゃんっ、ちょっとこっち来て!」
突然、何かに気付いたかのように池駒に腕を引かれる。
「ッ?!」
池駒の胸に勢いよく顔を埋められて、一体何が起こったのか分からず、しばしの停止。
でも煙草の香りを嗅ぎ取った私は、慌てて池駒を突き放した。
「ちょッっ、こんな会社の敷地内で何してっ」
呆然とする池駒を見上げて、その視線の先を辿る。
コンビニの中から、よく知る相手と。顔と声だけは知っている人物が出てきた。
こんな朝から。
はああん、朝帰りで揃ってご出勤ってやつですかい六神さん。
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