第94話

「これからはちゃんとスマホ、ロックしようね?」 


「……ほんと、ふざけてるなあんた。」


「ふふっ、ふざけてるのはどっちかな?見かけ倒しのチート君。」



あざ笑うように、俺にスマホ画面を見せつける水絵。


 

別に、今更時効じゃないのかとは思ってはいた。



でも今この狂った女が本気でひきつっている顔を見たら、やっぱり時効なんてものは存在しないのかもしれない。



「罪悪感あるならさっさと消せばよかったのに。」



……その通りだと思う。



「それでも消さなかったのは、なんでカナ?」



水絵がベッドに腕をのせ、俺の領域に踏み込もうと俺の顔を覗き込む。爽やかな朝から侵犯が甚だしい。



ただ領域を侵しているのは、どっちなのか。



「プライバシーの侵害って。チート君こそ、この子の人権侵害してるんじゃない?」



言い返せるはずもない。




「じゃあ、抱いてくれる?」

 

「は……?」


「昨日私に惨めなプレイさせたんだから当たり前でしょ?」



ついでに今にも喰われそうだ。




水絵が再びスマホ画面に顔を近付けて、何かに気付いたように再びスマホ画面を見せてきた。


 

「これってさ、もしかして大学?」


「……いや」


「あー懐かし〜!これって外カフェの裏手にあるベンチじゃない?!」



なぜ、こいつが大学構内のことを知っているのか。



「実は私も桐生君と同じ大学出身なんだよねぇ〜。」


「……は。まじ、で」


「舞夏と桐生君と私ね、同じバイト先だったの。大学の近くにあるショッピングモールのドーナツ屋でさあ。」



桐生が今の彼女とバイト先で出会ったのは知っていた。でもこの女も同じ大学だったとは聞いていない。

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