第92話

そんな一人反省会をしているうちに、一週間蓄積された疲労がのしかかったかのように瞼が重くなる。やっと明日は休みだってのに、なんで俺は狂った女とホテルにいるのか。



全ては桐生のせい、いや、実来と別れたせいだ。別れることになっていなければ、合コンなんて行くこともなかった。



誕生日にプレゼントを渡して「もう一度やり直すのもアリだと思う人ー」とか言ってみようか?ああ、そういえば付き合う時も俺は軽すぎる言動しかしていない。



桐生よりも軽薄なのは、俺か。



「好き」というたった二文字の告白が、レム睡眠に入る直前でようやく出てきた。



そこまで自分を追い詰めて、答えが出たと思った時には。



狐につままれるというのがお約束というものらしい。



世の中ほんと上手く出来ているから、人類の妄想劇は激しさを増すばかりだ。




 

目を覚ますと、すでにカーテンの隙間からは朝靄が漏れている。 



その窓を前に、ベッドの下でホテルのパジャマの上だけを着た黒髪の女が地べたに座っていた。片手で長細いスナックパンをかじりながら、もう片方の手でスマホを見ている。



古い井戸から出てきた貞子にしては、しっかり現代社会に馴染んでいる様子だった。



俺は何をしていたんだっけ、と思考を張り巡らせていると、ふと貞子が持つスマホの画面が目についた。



どこか見覚えのある画像。



自分を目が、否応なく見開く。

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