第87話
地下鉄の中。乗換の時刻をスマホで調べていると、隣に座る水絵が突然、不調を訴え始めた。
「む、六神くん……ちょっとわたし、きもち悪いんだけど。どうしよう……」
本当は酒に弱いという水絵は、無理してワインを二杯飲んでいた。
「無理して飲む必要なかったのに。」
「……だって、六神くんたちが飲んでるのに飲まないと、六神くんたちを白けさせちゃうかなって。」
“六神くんたち”と、あえて俺を代表として選出されれば、俺のせいなのかと俺に罪悪感を植えつけるわけで。
とにかく一旦電車を降りたいという水絵と乗換先の駅で降りて、なぜか近くのホテルに行く羽目になった。
―――――で、
卵割って、出汁と醤油にみりん少々、砂糖の代わりに罪悪感を入れて混ぜて焼いて、演出という名のエッセンスを添えれば、
「ねえ、私の身体が六神君を欲しているから私と遊ばない?
六神君の欲望だけ押しつけてむちゃくちゃなセックスしてもいいよ?」
ご覧の通り、ベッドの上で俺に跨がるフラストレーション女が爆誕するってわけだ。
ジャケットを脱いだ瞬間、ベッドに押し倒された俺。いつの間にか水絵はワンピースを半分脱いでブラ一枚の状態だ。桐生よりよっぽど詐欺師の素質がある。
「ねえ、聞ーてる?六神君。」
「…………」
ああ、吐瀉物事件の実来を思い出す。
でも実来はこの女ほど手際は良くないし、あれはマッパな上に呂律が回らない状態で、言うなれば日光猿軍団のサルに懐かれたようなもんだった。
誕生日プレゼントにリードか首輪をやるのも有りかもしれない。
そんなことを考えていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます