第86話
それが間違いとは知らずに。
「初めまして。
金曜の夜、4対4で。桐生とその彼女以外はフリーという建前で、スペイン料理がメインの酒場で合コンが行われた。
そこで、桐生の彼女の友達である、
俺の目の前に座る稲垣水絵の第一印象は、おとなしめの大和撫子タイプ。黒髪に艶のあるロングヘアで、ボーダーのシャツワンピース。大口開けて笑う実来とは対照的に、控えめな印象だった。
女性陣は4人共29歳って聞いていたから、男性陣は、結婚願望の強いガツガツしたイメージで構えていた部分があったと思う。
だから水絵を見て少し拍子抜けしたのが、俺の対人スペースに踏み入らせてしまった原因でもある。
合コンが終わり、桐生と彼女はそのまま二人で帰って行き、残されたメンバーで二次会に行こうという話がでた。
「悪いんですけど、俺は帰ります。明日朝から用事あるんで。」
なんの用事もないから、当然断り方もふわっとしたもんで。どうせその場限りの関係だし、相手に悟られたとしても、ただ「目当ての女がいなかった」だけだと理解されるだけだろう。
「あ、あの、…私も、帰ります。明日も朝から仕事があるので。」
気まずそうに、小さめのバッグを握りしめた水絵。
旅行代理店の窓口業務は土日関係なくシフト制で動いているらしい。水絵も、俺と同じ方向だというから途中まで一緒に帰ることになった。
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