第78話

「うっわ、なんだそれ。」


「…は?」


「首まで真っ赤。」


「え、うそ……!」



思わず自分の首を手で触って確かめる。でも自分の熱は自分じゃ計れやしない。 

 


窓に映る自分を見ても、緊張のあまり視界がぼやけてよく分からなかった。




「……相手が相手だけに、虚勢だけじゃ返り討ちにあうな。」 



意味不明なことをいう六神に、ようやく自分の感情が沸々と音を立て始めた。




「むかつく。」


「………」



何がむかつくのかと言えば、そりゃあ並べたら東京ドームが埋まるくらいにむかつくのだ。



「散々人を小馬鹿にして、勝手に人を誘っといて!」


「……小馬鹿?」


「言ったじゃん!!悔しかったらド清純になってみって!」 


「……あー?」



っなんだそのカスみたいな反応。




「タクシーで連行されて、無理矢理西口プロレスやらされて!!」


「西口…?」


「好きなだけ煽っといて、結局彼女の電話が大事でさー!」 

 


人がいないとはいえ、会社で何言ってんだと自分に言い聞かせても、私の口はとどまる所を知らなかった。



「そんなに私が嫌い?!」


「………」

 

「ねえ、そうやって弄んでつき放して、そんなに嫌いならもう私に関わらなければいいじゃん!!」 


「………」 


「ほらすぐそうやってだんまり!」


 

土日、どれだけ連絡を待ち望んでも寄こさなかったくせに。



私が玄関出て行った時だって、すぐに走って追いかけてこなかったくせに。



ねえ、なんで、



なんでそれでも私はあんたのことが好きなの?!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る