第70話

でもこの長身骨格ナチュラルでくそ羨ましい体型のまゆゆという人間は、中身がまじボケに近い。一見不思議ちゃんでもプログラミング的思考を持つ刈谷とは真逆で。



だから予想の斜め上か、斜め下のネタを持ち込んでしまうのだ。





「きーてよぱるるー!!」



今日は人気ひとけの少ない8階にあるラウンジでお昼を食べようと言うので、心の準備をしていた私。いや、金曜の夜のことを私に聞くんじゃないんかい。 



「……どったの。」


「どーもこーもないよ!!天変地異だよ!アルマゲドンだよ!!」


「どっちかにしないと宇宙に大迷惑だよ。」


「もうわたし生きてけない、お嫁にいけないっ!」


「え?そんなに死にたいほど恥ずかしいことしたの?」



私がメロンパンにかぶりつく中、まゆゆが絶望の表情で額に手を添える。



絶望したいのはこっちだよこのおバカ。



絶対に私の方が死にたいほど辛い思いをしたし、ずっと惨めだったはずだ。



あんなの勝手に酔って煽って、魔が差したところに彼女からの着信音で目が覚めましたといっているようなものだ。



中途半端に宙ぶらりんにされた私を思い出して、六神はきっと思い出し笑いをしていることだろう。



馬鹿みたいに欲情した私を思い出し、「やっちまった。」といたたまれなさを感じるよりも、疲れた時の笑いのエキスくらいにしか思っていないのだろう。



何一つ謝罪文のメッセージが届いていないのがなによりの証拠で、今日の朝一番に謝りに来るんじゃないかと期待して、早朝出勤した自分を殴ってやりたい。



会いたくないのに会いたい気持ちがある私は、結局いつまで経っても惨めな状況を、自ら作りにいっていた。



先輩からのいらない仕事と、友達からの降って湧いたネタ提供で少しは緩和されるかと思っていたけれど、今も六神からのメッセージを待つかのように、机の上にはスマホを仰向けに寝かせている。

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