第59話

どう考えたって、たかが面倒を見てきた後輩へのプレゼントがブランドものの腕時計だなんておかしいと思う。



「実はね、一昨日、朋政先輩に告白されちゃって。私なんかみたいなのが、びびるよね。」



すぐにスマホを取りに行くと思っていた六神は、なぜかベッドの横で呆然と私を見つめている。



私はその瞳から、目を反らさないよう注意していた。何を感じているのか、少しでも読み取りたかったから。



でも何事も感じていないかのように、いつも通りの六神が淡々と嫌味を連ねるのだ。


 

「あさってあたり、あられとヒョウと大雪と大雨が降るな。」


「……なにそれ。」 

 

「天候悪化で船の遅延が相次いでさ、直送先とクライアントからのクレーム対応に追われて地獄見るって話。」

  

「は?」


「で一気に航路開けたら今度は、大量に船つけすぎだって乙仲やフォワーダーからクレームの電話かかってくるわ、税関検査の待ちで引取が滞るわで直送先とクライアントからのクレーム対応で地獄見るって話。」


「…………」



はい。さっきまでの雰囲気、皆無ですかい。



「てかお前さ、なんで付き合ってる時に誕生日のこと言わなかった?付き合ってる時に誕生日迎えてたよなあ?」 


「……わ、わざわざ言う必要もなかったっていうか。いやそもそもあんたが私に塩対応すぎるから。言えなかったんだよ!」



メッセージの返信だって句読点すら見当たらない一言だったし、電話だって私から着信入れても、次の日しかかけ直してこないし。



それなのに、今カノからの電話にはすぐに出なきゃって思うんだよね?私は残念ながら、すぐに出なきゃって思わせられる女にはなれなかったってこと。



だから私たち、合わなかった。じゃなくて。



私があんたに見合わなかったんだよ。



気付いてたけど、気付かないふりしてた私の気持ち、なんでこんなに振り回されなきゃならないの?

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