第48話
会計が終わってもなかなか動こうとしないおじさんたちに、どうしたもんかと虚ろな目で見ていると、一人のおじさんが「お。」と振り返り私を見た。
「華金に独り飲みかあ?寂しいな〜!」
「あ、はは。いやあ、友達がみんな帰っちゃいまして。」
煙草とアルコールに輪をかけ、加齢臭を消す香水の臭いまでもが嗅ぎ取れた。
しかしながら、私は決しておじさんの嗜好品が融合した臭いは嫌いではないし、なんならおじさん自体が嫌いではない。
おじさんたちの時代にはなかった常識が、ただこの新時代にできてしまったというだけで、今や全ての厄介事がハラスメントに精通する世の中に順応しろと言われても、そう簡単には難しい話だろう。
笑ってやり過ごそうとすれば、おじさんに「薄情な友達だな〜」と言われ、その通りだと思い、「そうなんですよ〜。」と、無視すればいいところを思わず返してしまった。
「いくらだ?金だしてやる!」
「え、ええっ?!…いや、さすがにそれは駄目ですよ!」
「いーからいーから」
おじさんが無理に、万札三枚を手渡してくる。私が掌で押し返すように「無理です無理です!」と断っていると、後ろから新たな酔っ払いが絡んできた。
「おれがはらうんで、いらないっす」
「えあ?おー、にーちゃん背ぇたけえなあー!」
「ご厚意だけもらっとくんで」
後ろから腕を回され、そのにーちゃんの方へと引き寄せられる、私。
「友達かえっても彼氏はおったんかあ!」
おじさんらの中のまともそうな人が、「まあええから」となだめながら、万札おじさんを連行するように外へと連れて行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます