第43話

でも一番の阿呆要素は、この変わらない外見。



俺と別れた後だってのに何一つ変わらない。女は失恋したら、髪を切るだのカラー変えるだの、太るだの痩せるだの服装のタイプを変えるだのするもんだろう。



実来は俺とのことなんて、全く響いていません。というように、付き合う前となんら変わりない生活を送っているようで。



お元気そうでなにより。





「あ、六神、スマホ震えてる?」


「あ?……ああ、」



ズボンのポケットに入っていたスマホを取り出すと、今俺の中で一番の懸念材料からの電話だった。しかもすでに着信が二件入っている。



実来にみられている手前、出ない選択肢が有力候補だったが、その懸念材料を怒らせた後の煩わしさが目に見え、仕方なく通話マークをスライドする。



「……なんですか。」

 

『ちとくんっ?!今どこ?』

 

「は?今、もうすぐ駅」

 

『ねー今からうち来てー。美味しいご飯食べ来てよー!』


「…えー…今からかあ」



週のド真ん中くそだりい。


 

『19時までに必ず来てね?』


「はいはい」


 

路線真逆の場所まで行って帰るのだるいわー。

 


『え、なに?今日やたら素直じゃない?』


「いつもお利口なんでねボク。」


『ふーん…なんかムカつくー』


「そらどうも。」



実来のニヤついた顔が目に入る。スマホの持ち手を持ち替えた。



『捨て台詞のように“好き”って吐いてから切って』


「…………は?」


『ねえいーでしょー?恋人同士じゃん!たまには艶っぽいこと言ってよー』


「……“艶っぽい”。」


『ああも~いーやー』

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