第35話
大人と並んで歩いているようでも、まだまだ歩幅は狭苦しい。なんでもないような顔していても、必死におくれをとらないよう皆の後をついて行っている私。
だってしょうがないじゃん。恋愛なんて、大学以来のことなんだから。
「むがみの、ばか……」
「…………」
「話したくないんなら、もう私、帰」
「さすがにげろまみれの女を抱こうとは思わないわー」
「へ?」
「全身げろまみれの身体を湯で拭いた後に勃つと思ってんのかアホ」
六神が罪のないたべっ子を一つ、私にぽいっと投げつけた。飛距離が微妙なやつ。
「居酒屋での謝罪については100歩譲る。営業の鏡だからな俺。」
「…………」
「お前のげろまみれの服を着替えさせてその裸体を拭いてやったことについては120歩譲る。要領いいからな俺。」
「…………」
裸体とかいうなよ。
「だがしかし、それで抱けとまでいわれる筋合いはない!どう考えたってあり得ん!」
「は、はあ?!」
「お前さ、男は皆さかりたての中3男子とか思ってんじゃね?受験でストレス溜まる時期にあえて抜き専作って受験戦争勝ち取りにいくとか、そういう頭ですかあ?」
「……ぬき専って…クズ臭すごいんですけど」
なんだろう。さっきまでナーバスになっていた心が、目の前にいる誰かさんにより奮い立たされていく。
崖っぷちから深海に飛び込もうと覚悟を決めたところで、後ろから「ご飯だよ。」と呼び止められ、急に食欲わいてきたみたいな。
あれ?というか六神という人間って、こんなんだった?
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