第34話
私の父親がそうだった。普段の優しさから一転、怒った時はだんまりを決め込む人で、私がどんなに泣いて謝っても何も言わない。
「今度から気をつけるから」という浅はかな私の言動にも微動だにせず、ただじっと睨み続けるのだ。もしかして自分はいらない子じゃないのかと思わされるのは、鬼畜以上に恐怖だった。
ただ、いつどこでも修復できる親子関係とは違って、恋人という他人とは、絶縁になる可能性がある。
もし私が一歩下がった、大人しい何も言えないタイプの女であれば、六神とは絶縁になっていたことだろう。だから図々しいタイプの自分は、この先の未来も褒めて伸ばしてやりたいとかねがね思う。
「…ねえ、黙ってちゃ解決しないじゃん!私って、なんなの?彼女、なんだよね?!」
心の底から理解している。自分の秤も知らない女が、六神を問い詰める側ではないということは。
でも。なにか、口走っていないと。
もう二度と六神に口聞いてもらえそうにないんだもん。
自分のミスを認めた私えらい。ただ素直に謝ったら何してもゆるされるわけじゃないんだよ。頭ではわかってるんだよ頭では。
云うことを聞いてくれない実来春風のニューロン&シナプスが、逆切れして勝手にむきになっているだけで。しかも手が早い彼氏像を勝手に六神に押し付けているのだからたちが悪い。
抱かれたかったら素直に「抱いてください六神様」とそういえばよかったんじゃん?
もし六神に「今はまだその時じゃない」って拒否られたら?私と六神の仲だ。きっと「時を待とう」と思えるはずだし、六神だって時を待つ理由を300字以内でプレゼンしてくれるはずだ。
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