第30話

出世街道スタート地点までの助走では、半期ごとの個人営業目標達成が求められる。



六神は今のところ、すべて3割増しでクリア。加え、部署目標にも貢献してきた。特に見込み顧客を数匹たたき起こし、定期的な輸出案件を狩りとってきたのは大きい。



しかも六神が中途で入った採用試験で、六神は約50倍もの倍率で入社している。表紙が“ヒョウが降るオホーツク“の社内広報誌に載っていた。



通関士の資格持ってるとかTOEIC880点というのも本当なのだろう。ただ難関ともいえる中途採用を勝ち取ったのは、六神の前職からの影響も大きいと思うのだけれど。



六神はなぜか、前職を私に教えてくれない。ちなみに本人曰く「フリーター兼Vチューバー」だったのだそう。



この六神の前職については、過去3打数無安打で終わったため、私もあまり深く考えず、掘り返さないように努めている。





「そろそろお昼だね。なんか買い行く?」


「あー春風は服ないし、俺買ってくるわ。何がいい?」


「主にプリン体」


「“しそ漬たくあん”どこいった 笑」



たべっ子どうぶつを3、4箱しか食べていなかった私たちは、12時近くになって、ようやく健康で豊かな食生活の実現を目指すことにした。




「わざわざ服まで洗濯してくれなくてもよかったのに。」



そしたら一緒にスーパーでお買い物とかして。夫婦ごっこができたのに。うふふ。



カゴを持つのは六神で、カートをおすのは私で。なんでカートにカゴ入れないの?って私が六神に突っ込んでいる姿が目に浮かんだ。



私がそんな乙女心を抱いているとはつゆ知らず、この六神はとんでも発言をしてきた。

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