第28話

そして、逆側からたべっ子を唇で挟んだ六神千都世が、私にふかいふかいキスをした。



たべっ子の甘さとしょっぱさが広がって、今までの塩な六神からは想像もできない事態に驚く、よりも。



六神からのふかいキスに、あっという間に実来春風は侵さてしまった。



「っん、」



私の唇を、最後についばみながら離れる六神。



いつどこからかは分からないけれど、自分の全身にほてりが灯っていることに気がついた。



あつい。今にも塩分が加熱されすぎて、電気がはしりそうなほどに。



六神千都世の、笑うと大きめになる口元が。



私をみて、そんな顔してくれるの?っていう、甘い顔が。



好き。



今になって本気でおとしにくるとか。



狡いけど、大好きだ。





六神に渡されたトートバッグから、替えの下着を取り出し、そそくさと履いた。



「用意周到か」ってつッこまれそうなところでも、そこは大人。恋人としてのエチケットというか、そういうもんとして見逃してくれるらしい。



多分、未遂ハニートラップなんてバレることはないだろう。


 

「…俺のTシャツ、着とくか。」



六神がクローゼットから、自分の黒いTシャツを取り出してきて、私に彼シャツなどさせようとする。



「うで、通して」

「……は、い、」

「とんねる開通」



Tシャツの袖穴から手を入れられ、私の手を囚えてひっぱり出す。六神が「ガラにもなく照れてやんの」と言ってくるので、ガラにもなく存分に照れてみた。



「ばばーかばーか、ばばばーかふぅ」



慣れないことはするもんじゃない。



ハニートラップとか。私がダーリントラップにはめられてやんの。

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