第27話
12畳ほどの部屋の隅に置かれたテレビには、今日も元気に朝ご飯をもりもり食べているアナウンサーの姿があって。
その前では、座椅子に座り、こたつほどのテーブルに置かれたたべっ子どうぶつを、六神が箱から一つずつ食べていた。
六神は、この12畳とキッチンのついたアパートで、一人暮らしをしている。
ソファはない。ダイニングテーブルなんてものもない。フローリングにカーペットを敷いて、そこにこたつテーブルを置き、いつもご飯を食べている。
エリートが住むと噂のタワーマンションは、長者番付に載る人か、高所好物症、あるいは虫嫌いの人しか住まないと私は思っている。
そして壁際に置かれたシングルのベッドには、私がいた。半裸姿で、記憶障害により顔ぽかーんな私が。
きっと今私は、アホ面な“ちゅん”よりもアホ面をしていることだろう。
でも半裸というのは、残念ながら私の確認ミスだった。
全裸だった。
「ちょ……、え、あ、あれっ、」
布団の中には、どう見ても下着をつけていない身体が存在していて。私が昨日着ていた服一式、そして下着が見当たらない。
「ああ服?今洗濯中。」
「……し、したぎ、」
「したぎも。」
「し、下着……、って、かばん!かばんなげて!」
「そんな重いの投げれるか」
六神が、COSTAやら計算機やら雑誌やらが入ったトートバッグを私に手渡して。そして、たべっ子どうぶつ一つを私の口元に近付ける。
「…………」
「ほれ」
「あ、あさから、たべっ子?」
「朝からえづけ」
「…ちゅんちゅん、」
私が半開きの唇でそれをついばむと、六神が「まて。」とつぶやく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます