第26話
朝ちゅんシーンって、コンプライアンスに乗っ取り、てっきりベッドシーンを濁すために、あるいは匂わせるために存在するものだと思っていた。
でも私は気付いたのだ。
記憶がない描写を描こうとしても、描けない。
だから“朝“と“ちゅん”でごまかそうとしているのだと。
きっとその“ちゅん”は、舌を横に出したアホ面なスズメに違いないのだと。
「朝ちゅんって、ほんとに朝ちゅんちゅんて聞こえてくるのな。…いや、毎朝外でちゅんちゅんいってるか。」
そのちゅんちゅんうるさい半裸の男が持つ手には、けむりの上がる白いカップがあって。高そうな豆を挽いたばかりの、香り深いコーヒーとか入ってて。
もしくは、おしゃれなエスプレッソマシンで淹れたばかりのエスプレッソ。とろとろになったミルクを浮かべたやつ希望。
でも現実は。
すでにラフな白シャツに黒いジーパンを履いた男が、たべっ子どうぶつを食べていた。
朝からぼりぼりと。
「…………え」
「取引先のおばちゃんから貰ったやつ。
たべっ子にとらわれて、つい聞き逃しそうになりましたけど。
昨日の昨日まで私のことは、
まさか、まさかな。塩な六神が、そんないきなりさ。今のは聞き間違いかな?もしかして取引先のおばちゃんも春風という名前なのかな?
「おぉいまだねてんの春風ー」
たべっ子を上下にふって、私の意識確認をおこなう六神。次からは左右にふっていこう。
唐突な春風呼びにより、身悶えしそうになる春風。枕をとって、顔をうずめたいけど。六神が毎日使う枕でそんなことしようもんなら、変態妖怪 枕返しのレッテルを貼られることになる。
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