第21話

「というか、ぱるるんと六神むがみんって、なんで別れたんだっけ??」



“刈谷いきまーす”と、宣言もなしに踏み込まれた刈谷の急アクセル。不思議ちゃんの急発進はいつだって通常運転だ。



はッとする私と、ふて寝していたはずの六神の目が、否応なしに見開く。



「方向性の違い」

「プリンの奪い合い」



前者を発言した私に、六神がねむそうな声でぼそりと、「ソリの合わない芸人かよ」とつぶやいて。



「プリン奪い合って別れたらプリンに罪悪感植えつけるみたいでプリンに悪いわ。」と、私が店員さんを大声で呼び、名古屋コーチンプリンを注文する。



「いい加減呼び鈴ベル使えよ 笑」と、六神は再びまぶたを下ろし、シャットダウンした。



「こないだは“概念の違い”と、“実来のSDGsに対する努力義務不足”って言ってなかった?」

 

「っもう、二人ともいっつも適当なこと言ってるー。」




Un サステナブル持続不可能な私たちの原因は、毎日著しく変化を遂げていた。



苦笑する大輪田くんと、いまだ瞬きもせず、真顔で私を見つめる刈谷。どうでもいいけど、真顔の刈谷がネイルに住むクマの顔に似ている。



名古屋コーチンプリンを、ものの30秒ほどで持って来てくれた店員さん。ふて寝に逃げ、私に刈谷のあしらい役を押しつける六神とは比べものにならないくらい優秀だ。





「というか別れた理由って、そんなヤバいの??」




そんなヤバいのー。



不思議の国のクマさんは私を逃してはくれないらしい。



同期ですら教えたくない理由がそこにはあった。

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