第15話
「なんならもっかい付き合っちゃえばいいんじゃね?!」
ほろ酔いになった池駒が、大衆居酒屋の大衆に負けないような大声で言った。
池駒という人間を強いて二文字で表すなら迷惑でしかない。彼は気を遣って言ったつもりかもしれないけれど、相手にとっては余計なおせっかいと偏頭痛をもたらす。詰まるところ、“いい人”を履き違えてるタイプだ。
で、六神が反論するよりも、さきに返す私。
「むりむり。六神、今彼女いるもん。」
「……え?六神って、彼女いんの??」
ひたすら砂肝ヤンニョムを食べていたまゆゆが、ザクロ色の美酢サワーに手を伸ばしながら私を見た。多分あれはミチョだ。
「うん、黒髪ストレート。ど清純派。」
「って、なんでぱるるが答えてんの?」
「前にたまたま帰りが一緒になって、六神のスマホに彼女さんから電話かかってきてさ。ついでに画像見せてもらった。」
「うはー元カノいる前で今カノから着信って!笑」
「てか元カノが今カノの説明するって。どうなの。笑」
顔を見合わせ、大爆笑するまゆゆと池駒。
机にひじをつき、その爆笑を眺めていた六神。
一瞬、ちらと横目で私を見て。
同じように噴き出す私に、ため息をついた。ようにみえた。
酔っ払いが集まると、ただの爆笑感染騒ぎだ。発生源は私だけど、そのネタを作ったのは六神だということを忘れてはいけない。感染経路は六神だ。六神のせいだ。
いんや。悔しさと哀しさがあふれ出そうなのを堪えるために、ただ自爆しにいっただけだったりする。
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