第16話
でも六神に彼女ができたと知ったのは、もう一ヶ月も前のこと。私の中で処理しきれていなくとも、処理しかけている案件だ。
「私とは正反対のタイプ選ぶとか、喧嘩しか売ってないわ。」
まゆゆを経て、刈谷から渡ってきたハニーチーズコロッケを口に運べば、甘じょっぱいが口いっぱいに広がった。
その、小さな幸せを大きく噛みしめる。
向かいに座る六神が、私の顔を見るなり、今きたばかりの生ジョッキを一気に飲み干した。
「元カノの遠吠えかよ。悔しかったらど清純になってみ?」
……やば。
六神のその言葉で、うまく笑えない自分がいて。
あやうく顔面が崩壊しかける。酔いに、任せようにも。学生限定カシスオレンジじゃ、社会人の私は酔えやしない。
隣で社説並に政治を語る、今にも酔い潰れそうなオジちゃんの声を、必死に耳に引き寄せた。
せき止められた甘くてしょっぱい涙を、無理やり飲み込んでから、大きく手を上げて、こう言った。
「とびことたくあんのおむすびと、金目鯛味噌のお茶漬けくださーい!!」
「ギャハハハ」
元カノの遠吠えは、早くもメシで〆られようとしていた。
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