第13話

高身長のまゆゆは、いつもデスクトップから半分顔が出ていて、六神から内線があるたび私に変顔を寄越す。今年度、初めて席がお向かいさんになったもんだから、まゆゆはテンションが高いのだ。

 





「は……、今日って。同期会だったの?」



農政局からの修正依頼に手間取って、まゆゆとの飲みに15分ほど遅れて大衆居酒屋に来てみれば、なんとまゆゆ以外の同期3人と、六神がいた。



「そそ、同期会。実来みらいはハブられて誘われてないかと思ったわー。」



すでに泡が散ったグラス片手に、六神が目を細め、口角を上げて私を見た。



さらさらな黒髪ヘアから覗く、一重の切れ長の目が、今日も嫌味たらしく涙ぶくろを作っている。



「いや六神、同期じゃないじゃん。」


「1年半遅れて入っただけじゃん。ほぼ同期じゃん。」



「こいつ同期仲間がいないから寂しいだけなんだよ実来ちゃん。許してやって!」



私を“実来ちゃん”と呼ぶ、同期の池駒いけごま♂が六神の頭を撫でながら言った。


  

許すも何も。私に許しを乞う方がどうかしてる。



池駒は物流部のため、現場が多く、今日も私服で出勤らしい。スーツ二人に挟まれ、一人だけ黒いTシャツを着ているから一瞬店員が紛れているのかと思った。



そしてあたかも『どうぞこちらに』といわんばかりに、池駒が六神の前の空席を、利き手で差し出した。



どうかしてる。

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