第12話
今だって、申請書類の英字が一文字間違ってただけでわざわざ電話してきやがって。まさかのJAPANがJAVANになってたわけだけども。
社内メールで要件済ませればいいものを。
ヤツは切り際に「実来さんがJAVAN在住とは知りませんでしたー」と言ってきやがったのだ。
ヤツに見つかるミスほど嫌なものはない。
元彼にミスをからかわれるほど嫌なものもない。
まだ好きな相手に、モールス信号並みのコミュニケーションを求められても私に心の余裕はない。
なんで付き合う前よりも別れた後の方がずっとずっと好きになってるのか、なんて。
考える余裕もないため私は次に進むのだ。
まゆゆがデスクトップの画面に顔を戻してから約3分後、そっとまゆゆの手が私のデスクへと侵入する。
まゆゆの手の甲に貼られた黄色い付箋には、“今日いっしょ飲みいこ”、と書かれていた。
まゆゆとは一緒に新卒で入社した同期だ。今年で5年目になる。私が社内で仕事以外、一番に信頼を寄せている存在。
なぜか二人とも、希望は国内営業部だったのに、国際営業部の事務員として配属されてしまった。
海運業界ではそこそこ名の知れた
主に商社やメーカーの代行で、農水省や経産省に提出する輸出申請書類をオンライン入力するというもの。
どうでもいいけど、六神は国際営業部三課の営業マンで、主に大手メーカーを相手に輸出入を提案、交渉をしている。
さっき六神にミスを指摘されたのは、間違って農水省管轄の農政局から直接外線で三課に連絡がいってしまったため。
二課にも三課にも、私のように申請代行業務を担当している人がいるから、あちこちに連絡がいってしまうのはよくあることだ。
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