2

第19話


 ――とうとう、来た退園の日。小春日和である。直の教室は、施設と学校

 の玄関が見える。玄関の所で範加と雅名のお母さんが荷物を車に入れて

 いる。



 直の教室では、直、千春、退園する範加と雅名が話している。



「ありがとう。ちい。楽しかった。毎日、おちょっくて、ごめんな。看護師の言う

 事を聞きよ。また、手紙を書くからな。それから、直君、千春の事を頼むな。

 さようなら」



「ちいちゃん、泣かないでね。今日は、それぞれの新しい旅立ちなんだからね。

 また会えるわ。その日までお互いに頑張ろう。萩夜君の事も諦めずにいるか

 ら。萩夜君と会うと辛いから。会わずに行くわ。ちいちゃんも、直君もちゃんと

 言いなさいね。後悔するわよ」



 二人は荷物を持ち、直の教室のドアを開けて、お母さんの所へ行こうとした。



 思わず、千春と直は、二人を止め、四人で玄関に行った。



「......のー・まーちゃんも元気でね」



 千春は作り笑いしながら、詰まりそうになる声を我慢した。



(のー・まーちゃん、本当に、本当にありがとうね......)



 千春は思いつつも、直の顔を見た。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る