第7話:再びキツネの関所。

な訳で、エッチを餌に絵馬を外に連れ出した。

旅館で懐中電灯ふたつ借りて、キツネの関所の位置関係を旅館の仲居さんに

聞いて絵馬とふたり出かけることにした。


旅館の仲居さんに今から関所まで行くんですか?って聞かれた。

こんな時間に関所に用事なんて変わった人ですねって・・・。

私なら絶対近寄りませんけどって・・・。


なんで?て聞いたら、なんでもキツネの関所へ行きって言って帰って来なかった

お客さんがいたんだそうだ・・・。


あ〜よく聞く話かもしれないって俺は思った。

でもまあ、半妖がついてるんだから、そこは大丈夫だろうと俺は思った。


で、先に進むうちの家もなくなって懐中電灯に照られてるのは田んぼの畦道。


五六ふかぼり君、怖くない?・・・真っ暗で誰もいないけど」


「こんな時間で真っ暗な道に誰かいるほうが怖いだろ?」


「引き返そうよ・・・私お母さんに会えなくていいから」


「せっかくここまで来たんだから・・・行かなきゃ、俺も絵馬の母ちゃんに

会いたいし・・・」


「なんでよ五六ふかぼり君は関係ないでしょ?」


「萩の葉なんて狐の妖怪に会えるなんて妖怪マニア冥利に尽きるって

もんだろ?」

「絵馬の母ちゃんってたぶん平安時代から生きてると思うんだ」

「もしかしたら安倍晴明とも関わりがあるかもな」


「あ〜この前も言ってたね。そのって人のこと」


「安倍晴明の母ちゃんも狐の妖怪だったんだよ」


「え?そうなの?・・・私以外にも半妖っていたんだ」


「もしかしたら晴明さんの母ちゃんと絵馬の母ちゃんって知り合いって

言うか友達だったんじゃないのかなって・・・ただの推測だけどな」

「可能性なきにしもあらずだろ?」


「まあ、だいたい学者の言ってる昔のことなんて実際分かんないんだから、

ほぼ憶測でものを言ってるんだよ」

「間違ってても答え導き出さなきゃ書籍になんかできないだろ?」

「学者や専門家ってそれで飯食ってんだから・・・」


「ふ〜ん・・・そんなもんなんだね」


「もう、そろそろじゃねえか関所」


俺は懐中電灯をぐるっと回してみた・・・そしたら石でできた小さな

モニュメントらしきものが立っていた。

モニュメント「石碑」を懐中電灯で照らすとキツネの絵が彫られたていた。

その石碑の横に、キツネの伝説のその言い伝えを残す案内板もあった。


「このへんで間違いなさそうだな」


「タクシーのおっちゃんが狐火が見えたらって言ってたよな」


「真っ暗だよ・・・狐火なんか見えないけど・・・」


「絵馬・・・ちょっと母ちゃん呼んでみろよ」


「え〜こんな暗い不気味な場所で大声出すの?」


「だってよ・・・ここにバカみたいに突っ立ってたってしょうがないだろ?」

「人んちを尋ねたら声かけるもんだろ?」


「ん〜分かった・・・じゃ〜呼んでみる」


そう言うと絵馬は口に両手を当てて、おかあさ〜〜〜〜んって呼んだ。

だけどあたりは静まりかえったまま・・・。


「無理みたいだから帰ろうよ・・・もういいよ」

「諦めきれないよな・・・絵馬の母ちゃんに会って昔のこととか聞いてみたかった

のにな・・・」

「もう一回だけ呼んでみ?」

「それでも出てこなかったら旅館へ帰ろ・・・」


「分かった・・・」


そう言うとまた絵馬は口に両手を当てて、おかあさ〜〜〜〜んって呼んだ。


シーーーン・・・。


「やっぱり無理み・・・」


そう言いかけて絵馬は叫んだ。


「キャッ・・・五六ふかぼり君、あれ?」


絵馬が指差した方向にひとつ火の玉みたいな明かりが灯った。

その明かりが動いて俺たちのほうにやってくる。


「わ・・・あ、あれ、もしかして狐火ってやつじゃないか?」


「そこな御仁・・・私を呼びましたか?」


つづく。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る