第4話:ふたりで シェアしないか?」

ラブドールにまでなって俺のところにやって来た絵馬。

あのサプライズがなかったら俺たちは巡り合ってなかったに違いない。

その上、絵馬はなんと狐と人間のハーフだって・・・。

俺みたいにオカルトや妖怪に詳しいやつじゃないかぎり、信じがたい話・・・。


恋人としての段取りも踏まずに、即セックスに持ち込もうとした絵馬。

そのまで俺としたかったのか?。

って言うこともあるが、何より絵馬が半妖だってことが俺には絵馬を

拒否る理由なんかないわけで、彼女の望むままに絵馬を彼女にした。


彼女は俺と同じような安アパートに暮らしているらしい。

そこで絵馬を呼び出してひとつ提案をしてみた。


もちろん大学にいる時の絵馬は狐耳も尻尾も出ていない。

人間にカムフラージュしてるからね。

人間でいることが絵馬にはすこぶるキツいらしい・・・そうやって

絵馬は何十年も生きて来た。

俺と俺の部屋にいる時が彼女が半妖として一番安らげる時なんだろう。


「おっはよ、五六ふかぼり君・・・なに?用事って」


「あのさ、絵馬・・・今のアパートいくら家賃払ってる?」


「ん〜と5万5000円」


「俺もそんなもんか・・・あのさ、どこか安手のマンション借りてふたりで

シェアしないか?」


「私と五六ふかぼり君一緒に住むの?」


「付き合ってるし、俺たち恋人同士って言ってもいいんだから」

「どうかなって思って・・・一緒に住むメリットのほうが大きいだろ?」


「私、五六ふかぼり君と暮らせるなら大賛成」

「好きな時にエッチできるし・・・」


「そこかい!!」


ってことでさっそく大学をサボって絵馬とふたりで不動産屋に言って

よさそうな物件を紹介してもらった。

少し郊外だけどや家賃も70,000円くらい・・・。

それなら俺と絵馬の2人馬力でバイトすれば充分だろう。

絵馬は施設からいくらか援助してもらってるみたいだし・・・。

そこで目当てのマンションを内見させてもらった。


それほど古くもなく新しくもなく築20年ってとこらしい。


「駅まで少し遠いけどここに決めるか」

「大学はふたり一緒にバイクにタンデムで出かけよう」


「バイクって?」


「バイクはバイク・・・ミネギシってメーカーのフォックスって250ccの

バイク持ってんの、俺」


「そうなんだ・・・大学へはいつも電車だよね」

「バイクは基本通学には使いたくないんだ・・・バイクを雨に濡らしたく

ないからね・・・」


「え?いつ雨が降るかわからないんだよ、じゃ〜ふたり乗りなんて無理じゃん」


「いいの・・・俺はバイクより大事なものができたから」


「え?なにそれ?大事なものって?」


「そんなの半妖の彼女に決まってるだろ?」


「ああそか・・・私だって・・・同じだよ」

「私にも大切なものできたし、五六ふかぼり君って言う妖怪好きなオタク」


「俺たちきっと巡り会うようにできたんだよ・・・運命だよ」


「私がラブドールになったおかげでしょ?」


「それも運命・・・」


「運命じゃなくて私がその縁を作ったの」

「私が五六ふかぼり君の小指に赤い糸を結んだんだよ」


「分かった、そういうことにしとく・・・」

「そうだ・・・マンションも決まったし、もうひとつ俺から提案なんだけど・・・」


「なに?」


「俺さ・・・一度、岩手県へ行ってみたいって思ってたんだ」

「絵馬のお母さんのふるさとって岩手県だろ?」


「そうだけど・・・」


「俺の本棚に「遠野物語」って本があるんだ」


?」


「そう柳田 國男って人が書いた地方の妖怪伝説をまとめた本が「遠野物語」」

「ロマンと夢があるだろ?・・・」

「俺はずっと以前から岩手県の遠野を訪ねてみたいって思ってたんだ・・・」


「そんなに妖怪好きなのに行ったことないの?」


「ついつい先延ばしにしちゃって」

「でも絵馬がきっかけになった・・・絵馬、お母さんに会いたくないか?」


「え?今更?・・・まあ会いたいっちゃ会いたいけど・・・でももし亡く

なってたら?」


「それは俺にも分からないけど絵馬の母ちゃんてまだ熟女だろ?」


「なによ熟女って・・・ヤらしい言い方・・・中年って言いなさいよ」


「妖怪って基本不老長寿って聞くけど、だからさ生きてる確率高いと思うけど・・・お母さんと会うの嫌か?・・・そんなに会えるチャンスないぞ?」


「お母さんの故郷は私の故郷でもあるんだよね・・・」


「そうだな・・・でも嫌なら無理強いはしないけど・・・」

「行かないっていうのなら・・・暇だから俺も欲求溜まってるから絵馬を襲う

けど・・・」


「じゃ〜岩手県へは行かない・・・襲って・・・」


「え〜ウソだよ・・・冗談・・・真面目に受けとらない」

「じゃ〜逆に絵馬が岩手県へ行かないって言うならエッチはいつになるか

分かんないな・・・」


「じゃ〜行く・・・行っちゃう、いっぱい行っちゃう、イカして・・・」


「あのさ、そう言う言い方するとエロく聞こえるから・・・」


「だって、聞こえるように言ってるんだもん、コン!!」


つづく。


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