ぎこちない家族

　藤堂家は年に五回、二週間ほどの期間に亘って、いつもと違う妙な感じになる。

　家族の誰もがピリピリと神経を張り詰めているような、それでいていつもと同じだと振る舞おうとしているような、何とも言えないぎこちない雰囲気に包まれる。

　その妙な雰囲気の中心にいるのは、藤堂家の次女藍子。

　藤堂家の誰もが皆、藍子を中心にぎこちなく生活し始める。

　そしてそれは藤堂家の人間以外にも影響を及ぼす事がある。

　六月末。

　暦の上ではまだ梅雨が明けていないとしても、雨の降る確率が随分と減り、降り注ぐ陽射しが体感的に夏を感じさせるようになった頃。

　藤堂家はその妙な雰囲気に包まれる期間を迎えた。

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