イレギュラー②
あっという間ってほどでもないけど、井上先生との勉強の時間は、最初に感じたほど苦痛もなく、それなりに早く過ぎていった。
気付けば閉館の時間になってて、あたしたちは揃って図書館を出た。
梅雨時にしては珍しく晴天の午後。
こんな日に勉強に付き合わせて悪かったなと思いながら、お礼を言って帰ろうとした時。
「腹減ったなあ」
井上先生が独り言のように呟いた。
もしかしたらそれは本当に独り言だったのかもしれない。
ただの独り言だった可能性が大きい。
でもお昼前から三時半まで、何だかんだと暴言は吐かれたけどずっと勉強に付き合ってもらってたから、何となく聞き流す事が出来なくて。
「何か食べに行きますか? お礼に奢りますけど……」
本当はそんな事言いたくないけど、言わなきゃいけないような気がした。
あたしの言葉に井上先生は「おっ」って感じの表情をして、
「良い心掛けだ。女は顔より気配りだぞ」
どこかで聞いた事あるような事を言う。
そして奢ってもらう立場なのにも拘わらず。
「ファミレスで我慢するか」
なんて言いながらさっさと歩き始めた。
井上先生がどれだけ食べる人かは知らないけど、男の人が食べる量を考えると、今月のお小遣いは残りそうにない。
お兄ちゃんの肩叩きをしたらいくらか貰えないかななんて、考えても無駄な事を考えながら井上先生のあとをついて行った。
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