オープン!ユウレイ相談所
翌日の朝、ユウは紙の束を抱えて町中を歩いていた
「この町、すっごく綺麗だな〜!」
ユウは周りを眺めながら呟く。
道は綺麗に舗装されていて凹凸がない。そしてこの町は清掃活動が盛んらしく、周りにごみが全く落ちていない。家の塀も綺麗で、道に清潔感があった
(こういう町っていいよね〜!)
ユウは笑みを浮かべ、手に持っている紙を見る。その紙には《霊に襲われた時はご連絡ください》という見出しがある。ポスターだ。
ユウは今、ポスター貼りをしているのだ
「レイがせっかく作ってくれたけど…こんな綺麗なところに貼るの、なんか罪悪感あるな〜」
そう言いながら角を曲がろうとした。
その時、突然目の前にハーフアップの女の子が現れた
「わっ!」
バサバサーッ!
ユウが持っていたポスターが地面に散らばる。
女の子とぶつかりそうになり、驚いて落としてしまったのだ。
(あー、やっちゃった〜!)
「ごめんなさい!!」
ぶつかりそうになった女の子が頭を下げた。それを見て一瞬驚いたが、慌ててユウも頭を下げた
「いやっ、私がちゃんと前見てなかったんです!こっちこそごめんなさい!」
「い、いえいえ!あっ、ポスター拾うの手伝います!」
「ほんと?!ありがとうございます!」
2人はしゃがむとポスターを拾い集めた。
「結構散らばってますね」
「そうだね…ごめんなさい、拾わせちゃって」
「いえ、こうなったのは私のせいなので!」
女の子は微笑み、ポスターを丁寧に拾っている
(相手が優しい子で良かった〜)
もし怖いおじさんやヤンキーだったら…と考えるとゾッとする。いろんな意味で女の子への感謝の気持ちでいっぱいになった
「これで全部ですかね?」
女の子が顔をあげて言う。いつのまにか、ポスター散らばっていた地面が綺麗になっていた
「そうだね!ありがとうございます!」
ユウは女の子からポスターの束を受け取る。その時、女の子の手にユウの指先が貫通しているのが見えた
「あっ…!」
ユウは目を見開き、とっさに手を引っ込める
「どうしたんですか?」
女の子が不思議そうにユウを見つめる。ユウは焦りながらも、両手を胸の前でブンブン振った
「だ、大丈夫!ち、近くに虫がいてびっくりしちゃっただけです!」
「そうですか、それはびっくりしますよね」
そう言って女の子は笑みを浮かべる。それを見てユウは、なんとか誤魔化せたことに安心し、ため息をついた
(危なかった〜…私が幽霊だって知ったらびっくりされちゃうよね)
ユウはドキドキしながらも再び女の子からポスターの束を受け取った
「ありがとうございます」
「どういたしまして。あの、あなたカウンセラーさんなんですか?」
「は、はい、そうです!」
「素敵ですね!お仕事頑張ってください!」
「ありがとうございます!」
「では、私は失礼します!」
女の子はそう言って、立ち去った。ユウはポスターの束を抱えてゆっくり立ち上がると、女の子の後ろ姿を見つめる。
(礼儀正しい子だな〜…素敵…)
見た目的にユウと同じくらいだろう。しかし自分より大人っぽく見える。
(生きてる年の数は一緒くらいなのにみんな違うのが不思議だよね〜)
そう思いながら視線を前に戻すと、さっきのハプニングが脳裏によぎり、再びため息をついた
「またあんなことになったら大変だ…」
ユウは半霊とは言えども、結局は幽霊だ。もし人間にぶつかってしまっても、そのまま通り抜けてしまう。さっきはとっさに立ち止まったことで、ギリギリそのようなことにはならなかったが、幽霊ということがバレるとおそらく、大騒ぎになってしまうだろう。
(早く貼って帰ろ〜…)
ユウはそう思い、角を曲がると早足で歩いた
その頃、レイは小屋の屋根に木でできた看板をつけていた。その看板には『ユウレイ相談所』と書かれている。自分たちの名前と幽霊を掛けて付けた、相談所の名前だ。
「ふぅ、これでいいかな」
レイはハシゴから降りると離れて看板を見てみた。
「うん、いい感じだね!」
看板に書かれている白色の『ユウレイ相談所』の文字は、丸くて可愛いフォントになっている。そのおかげでここが心霊スポットとは思えないほど明るい雰囲気になった。
「看板つけるだけでこんなに変わるんだな〜」
レイは腰に手を当てて微笑むと、道具を片付ける。すると、後ろから元気な声が聞こえた
「おー!すごーい!」
振り向くと、ポスターを貼り終えて帰ってきたユウがいた
「ユウおかえり。早いね」
「うん!急いで貼ってきた!」
「そんな急がなくてもよかったのに」
「まぁ、理由は後で話すね!」
ユウはニコッと笑い、看板を見る
「看板、可愛いね!」
「いい感じでしょ」
「うんっ、めっちゃいい!昨日まで何の変哲もないただの小屋だったのに、一気に変身したね!」
ユウがそう言うと、2人は満面の笑みを交わす
「ありがと、レイ!」
「そっちこそポスター貼りありがとう」
「どういたしまして〜!相談所もポスター貼りもOKだね!」
「他に準備あったかな?」
すると2人は、「うーん…」と唸りながら考える。テーブルやソファーなどの家具は、昨日のうちに設置しておいた。飲み物や食べ物は、ある程度半霊界から持ってきているものや、この世界の店で買ったものがあるため、あまり困ることはないだろう。
しばらく考えていると、ユウが何か思い出したようにぱっと顔をあげた
「そうだ、私たちの準備だ!」
「僕たちの準備?」
「そう!服装とかあるでしょ!」
「確かにそうかもだけど、それらしいのなくない?」
「それがあるんだよー。こっちきて!」
するとユウは小屋の中へ入っていく。レイはそれに着いて行った。中に入ると、ユウは小走りでバッグの方へ向かった
「レイに渡したいものがあるんだ〜!」
そう言ってユウはバッグの中を探ると、小さなポーチを取り出した。そして中身を取り出す。
すると、ピンクとグリーンの2つの十字架のヘアピンが出てきた
「わぁ、綺麗だね」
「ふふっ、私が作ったんだ〜!」
「ユウの手作り?!すごいね!」
「えへへ〜、ありがとう!はい、あげる!」
ユウはレイにグリーンのヘアピンを差し出す
「えっ、いいの?」
「もちろん!"霊界カウンセラー"の証だよ!」
「へー、それいいね。ありがとう!」
「緑で大丈夫だった?」
「うん!むしろ好きな色だよ」
レイは、ヘアピンを受け取ると左側に付けた
「どう?」
「すっごく似合ってる!!」
「ありがとう。ユウはピンクなんだね」
「うん!私ピンクが好きなんだ〜!」
そう言ってユウは右側にヘアピンを付ける
「似合ってるね」
「ほんと!!ありがとう!」
ユウは嬉しそうに笑うと、またバッグを探った
「まだあるの?」
「うん!ちょっと待ってて!」
次は、綺麗に畳まれた2つの白い布を取り出した。
「それなに〜?」
「これはね〜、広げてみて!」
レイは白い布を広げてみる。すると、その布の正体は白衣だった。左胸のところには、ヘアピンと同じ色の十字架のバッジがついている
「すごい、白衣だ!」
「ふふっ、カウンセラーと言ったら白衣って感じがするでしょ!」
「うん」
「だから作ってみた!」
「これも手作りなんだ?!」
レイは驚いて、目を大きく開く。それを見てユウはクスクスと笑った
「レイ、いい反応するね!」
「驚かない人なんていないと思うよ!服を作れるなんてすごいよ!」
「えへへっ、人間の時からこういう物を作るのが好きなんだ!」
ユウは、ピンクの十字架がついた白衣を顔の前で広げる
「せっかくレイとカウンセラーができるから、形から本気で入りたいなって思って。思いを込めて、頑張って作ったんだよ!」
それを聞き、レイも白衣を見つめる。そして、ユウに微笑んだ
「うん、ユウの思いが伝わるよ。作ってくれてありがとう!」
「こちらこそ、私と一緒に霊界カウンセラーやるって言ってくれてありがとう!」
2人は同時に白衣を羽織ると、ピシッと形を整え、顔を見合わせる
「これで準備万端だね!」
するとレイは頷く。すると、ユウは笑顔で声を上げた
「ユウレイ相談所、オープン!」
そして、2人はパチンッと両手を合わせ、ハイタッチをした
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