第11話

✳︎






「……待たせた。ごめん」



母校近くにあるカフェのオープンテラスが待ち合わせ場所。


約束の時間を30分過ぎた頃、ようやく待ち合わせの相手が現れて、読んでいた本に影を落とした。



「見てください、先生。落ち葉の栞が作れそう……」



街路樹から、はらりと落ちてきた秋色の葉か゛、あの頃から私のお守りとなった文庫の上で踊る。



「それ、いつも持ち歩いてるんだな」



苦笑しながら、色褪せた紙の上に指を滑らせる先生。


このページは、先生からの手紙の最後の言葉がある。


何度も何度も読み返している、先生からの最初で最後の手紙。



「私の宝物で、お守りですから」



あの時と同じように、胸にそっと抱きしめた。


そんな私の目の前に、置かれた1枚の手紙を見て、ハッとしてそれに手を伸ばした。

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