第12話

「まさか、ずっと持ち歩いてるんですか?」



そんな、だってそんなの恥ずかしすぎる。


今では幼すぎる絵柄の入った封筒は、私が先生に書いた最初で最後の手紙。




「俺にとっては、これが宝物で、お守りだったからね」


「でも……」


「お互い様、だろ?」



反論は、あっさりとしりぞけられてしまった。



「先生……」



呼びかけた私の唇に、先生の指が触れる。



「そろそろ、先生は卒業しないか?」


「え……」


「名前、知らないわけじゃないだろ?」



名前なら、もちろん知ってる。


でも、『先生』という呼び名は、私にとって特別でもあったのだ。


でも。



「先生こそ、名字呼び、抜けてませんよ」


「あ……」



私達は、お互いがいつも、お互い様なのだ。


これからもずっと……。




完結

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