第8話

「……いや。そういう約束だっただろう?」


「え?」



約束?


先生と約束なんてしただろうか?


記憶の引き出しを必死で開けていくのに、何も思い出せない。


先生との約束なら、忘れるわけないのに。


近づいてきた先生が、私の手から文庫を取って、徐に表紙を外す。


そうして差し出された文庫の裏表紙に書かれてある数字の羅列を見せられる。



「気付いて、なかった?」


「え?」


「推理もの、好きみたいだから仕掛けてみたのに……」



普段見たことのない、悪戯っ子のような表情の先生を間近に見上げる。



「それとも、気付いて知らないふりしてるのかなとも思ってたんだけど……全然変わらないからよめないや」



先生は何を言ってるんだろう?



「この本、読んでて違和感なかった?」


「違和感?」

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