第7話

「はい、」



不意に私へと伸ばされた手。


え、と、戸惑う。


まさか、私が先生に手紙を書いてきたことを知っているのだろうか?


そんなバカなこと……。



「返しにきたんだろ?」


「え?」


「夏に、渡した本を」



先生の言葉にハッとして鞄の中にある一冊の文庫のことを思い出した。


夏休み、ずっと貸出中になっている文庫が読みたいと話した時、先生が自分のものを貸してくれたことがあった。


確か、もう読まないから、あげると言われたはず……。


返さないといけなかったんだ!


慌てて本を取り出して先生に渡した。



「すみません……返すの遅くなって」



恥ずかしすぎる。


なんて失礼なことをしていたのだろう。


貸したつもりの本を、もらったつもりでいたなんて、図々しすぎだ。

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