第4話

「倫には関係ないし」



そうだ倫には関係ない。


というか、倫にだけは知られたくない。お喋りの倫に知られたら、お母さんどころかお父さんにまで知られちゃう。


高校生が彼氏とか、お父さんはきっとうるさいに違いないもん。


……て、彼氏とか、まだ違うし!


告白はされたけど、私は返事もしていないし、付き合うなんて話もしていないのに、なんて気の早いこと考えているんだろう。


頭をブンブン振って、競り上がってくる熱を飛ばす。


顔、赤くなってるのが分かる。


そんな顔を見られたくなくて、思わず声を上げた。



「倫、テレビのチャンネル変えてよ。朝の占い見たいんだから」


「あー、私も見たい」


「父さんのも見といて」


「あー、もう、自分で見ろよ」



皆の視線をテレビに誘導させて、ホッと息を吐く。


いつもは8時に出ても十分間に合うのに、今日は少しでも早く学校に行きたかった。


早くに目が覚めたから、準備だって早くできる。


いつも以上に時間をかけて、鏡と向き合う。


普段はすっぴんの肌に日焼け止めとパウダーをはたく。


二重は親譲りで、目もどちらかと言えば黒目がち。


それをさらにパッチリに見せるためにビューラーで睫毛を上げた。


うっすらと引いたリップはチェリーブロッサムの色付き。


肩より少し長めのボブは、アイロンで丁寧に伸ばした。


制服の皺がないことを確認して、リボンタイプのネクタイをまっすぐに留めた。


少しでも、東条君によく見られたい。


だって、告白の返事をするのだから。


私も好きですって、ずっと好きでしたって、付き合ってくださいって、


彼にそう伝えるのだから。


通学用のバックを肩にかけて、ローファーに足を滑り込ませたら、玄関の扉を開け放って外へ飛び出した。



「いってきます!」



その言葉が皆に届いたのかどうか定かではないけれど、そんなことどうでもいい位に心は逸る。

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